1999 年 1999 巻 11 号 p. 701-713
ポリマーヒドロゲルと界面活性剤との相互作用,および両者のハイブリッド材料に関する最新の研究を概説した。ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)ゲル(NIPA)の体積相転移挙動は,界面活性荊の添加によって劇的に変化する。相転移温度は,界面活性剤の化学構造に大きく依存した。この理由を明らかにするために,界面活性剤のNIPAゲルへの結合等温線を測定した。その結果,相転移に伴うポリマー鎖のコンホメーション変化によつて,界面活性剤のゲルへの親和力がスイッチされるという大変興味ある現象を見いだした。この現象は,ヘモグロビンの酸素運搬や酵素反応の機能の模倣となっている。また,界面活性剤によるNIPAゲルの転移点の変化は,吸着能の差として理解できることも明らかにした.重合性界面活性剤である2,3-ジヒドロキシプロピル=ドデシル=イタコナートの発色性ラメラ液晶を用いて,ヒドロゲルと二分子膜のハイブリッド材料を初めて合成した.このハイブリッド材料は,ゲルまたは二分子膜が単独では示さない相乗的な性質を示す。また,流動ひずみをかけた直後に重合することにより,膨潤挙動や光学的/力学的性質が巨視的異方性を示すゲルの合成にも成功した。
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