日本化学会誌(化学と工業化学)
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イミノホスホランとイミノアルソランのStevens転位の反応機構
蒔田 桂纐纈 銃吾二宮 善彦古賀 伸明
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1999 年 1999 巻 6 号 p. 397-405

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抄録
イミノボスホラン,アルソランはイリドの等電子体である.イリドと同じくStevens転位を行う可能性が期待できる。この転位機構を検討するためモノ置換のイミノボスホラン,アルソランについて次の反応の理論的計算を四次までのMφller-Plesset摂動法を用いて行った。
ZH2MNH→H2MNHZ
(Z=H,CH3,CH=CH2,SiH3andGeH3:M=P and As)
水素,メチル基,ビニル基は,Weodward-Ho伽am則に従い大きな活性化エネルギーを必要とするアンタラ面での転位を行うが,シリル基,ゲルミル基の転位の活性化エネルギーは低くかつスプラ面での転位を行う.転位における遷移状態の構造や軌道相互作用を検討することによりシリル基,ゲルミル基における超原子価特性の存在が確認され,この特性が低い活性化エネルギーとスプラ型の転位を行う原因であると結論できた。また,イミノボスホラン,アルソランの転位をイリドと比較すると水素,メチル,ビニル基転位では活性化エネルギーが約15kcal/mol-20kcal/mol大きく,転位が起こりにくいと考えられる。これは切断されるM-Z結合がイリド体よりイミノ体の方が強く,遷移状態での大幅な結合の伸長が要求される協奏反応が起こりにくいからである。一方,シリル基,ゲルミル基の転位では大きな差が見られずこれらの基の転位する可能性が期待できる。
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