認知神経科学
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シンポジウムⅡ-01
光トポグラフィ信号の意味
灰田 宗孝
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2012 年 13 巻 3 号 p. 241-247

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抄録

脳機能測定装置には、神経活動を直接測定する脳磁図や脳波の他に、脳の神経活動の亢進に伴う脳血流の増加を測定する近赤外光(NIRS)等がある。NIRS による脳機能測定装置は低侵襲性、比較的安価、特殊な免許不要等の特長を有する。意味のある測定結果を得るには、測定方法に工夫を要する。ヘモグロビン吸収係数は波長依存性が有り、それを利用し、脳内の酸素化ヘモグロビン(oxy-Hb)と脱酸素ヘモグロビン(deoxy-Hb)、そして総ヘモグロビン(total-Hb)量を求める。生体は強い散乱体のため光路長が長いが、それが求められないため、mol/ L・cmといった、光路長を含んだ表示をしている。脳を賦活化するために被験者に課する事柄(タスク)、それに対するコントロールの配置つまり測定プロトコールが非常に重要である。ブロックデザインと事象関連法が有用である。更に、比を取ることで、個人差を減少できる。NIRS 信号を説明できるモデルを提唱した。それは、① NIRS の信号は主として毛細血管網内のヘモグロビンを反映している。②脳血流を面積S(血管床)と速度v の積と考えて検討する。これにより、脳の活性化に伴う典型的変化のoxy-Hb の上昇とdeoxy-Hb の低下が説明できる。さらに以下の結論が得られる。① total-Hb の増加は血管床の増加のみを反映し、血流速度の変化には関係しない。② oxy-Hb の増加は血管床の増加と速度の増加を反映する。③ deoxy-Hb の低下は血流速度の増加を反映する。今後の問題として、顔面血流の影響についても説明した。

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