認知神経科学
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教育講演
大脳機能局在の現状と課題
──臨床の立場から──
板東 充秋
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2015 年 17 巻 3+4 号 p. 118-126

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抄録

【要旨】1. ヒトの活動が中枢神経系の活動に基づくというのは、神経学のいわばセントラルドグマである。
症状と病巣の対応が顕著で互いの予測可能性が高く、その役割を推測できるものを巣症状と呼ぶことがある。
2. 局在性の高い発語失行でも、1)症状の定義や所見、病巣に議論がある。2)病巣を中心にgraceful degradationがある。3)発症機序を病巣や賦活研究だけで解明できるか疑わしい。
3. 症状の定義─病巣の対応が比較的わかっており、機能、病巣ともに限局的だが、広汎に分布し、しかも内部構造がよくわからない例として、言語機能では、1)一つの部位が複数のプロセスに、複数の部位が一つのプロセスに関わる。2)graceful degradationを示す。3) 転位可能なプロセス群がある。
4. 分散した部位が結合したネットワークと考えられる例として失行は、左半球優位だが、白質に大きな病変が必要であり「中枢」が不明確で、ネットワーク自体に「局在」する可能性がある。
5. 局在がよくわかってない例として、知能は、部位、機能ともに広汎なネットワークで、かつ、加算可能である可能性がある。
6. 以上、様々な局在性が示唆される。局在性の強い病巣でも、損傷が部分的なら機能低下も部分的というgraceful degradationを示す。神経心理学的機能の内部構造の解明は、病巣研究や賦活研究で機能や病巣の局在を追求するだけでは不十分で、他の分野の寄与も期待される。

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© 2015 認知神経科学会
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