認知神経科学
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原著
失語症患者の言語・認知機能障害とコミュニケーション活動制限の経時的変化
──WAB失語症検査と短縮版CADL検査を用いた検討──
福永 真哉服部 文忠中村  光中谷 謙平田 幸一
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2016 年 18 巻 1 号 p. 30-37

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抄録

【要旨】失語症患者の言語機能障害、認知機能障害とコミュニケーション活動制限の経時的変化ならびにその乖離の要因について、言語機能の指標であるWAB失語症検査のAQ、認知機能の指標であるWAB失語症検査のCQ、コミュニケーション活動の指標である短縮版実用コミュニケーション能力検査(短縮版CADL)の得点を用いて検討した。その結果、言語機能、認知機能とコミュニケーション活動は相関して改善するが、経過に従い言語機能は自発話を中心にコミュニケーション活動と比べて改善が少なく、乖離する可能性が示唆された。一方、認知機能とコミュニケーション活動の改善には差がなく、その要因として代償反応の基盤となる読み、書字、構成といった機能の改善が関与したと考えられた。次に、コミュニケーション活動制限における代償反応の関与を調べる目的で、患者を経過中の代償反応の増加の多寡で2群に分け、経過中のWAB失語症検査のAQならびに短縮版CADL得点の差を比較した。その結果、短縮版CADL得点で有意差を認め、コミュニケーション活動制限の改善には経過中に患者が自発的に用いる指さし、書字といった代償反応の増加の多寡が関与することが示唆された。コミュニケーション活動制限の改善にあたっては、患者の認知機能障害に応じて適切な代償・代替手段を見い出す必要性が感じられた。

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© 2016 認知神経科学会
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