【要旨】聴覚領域における統計学習は、音声言語の単語分節化として行動指標に基づいて心理学的に研究されることが多く、神経生理学的研究は数少なかった。単語分節化の研究で広く用いられる3音節疑似単語のランダム連結は、単純マルコフ連鎖と見做すことができる。より一般化された高次の確率過程で規定される刺激系列を用いて、統計学習を神経生理学的指標で評価する手法により、これまで余り光が当てられていなかったヒト脳の学習機構の方略に迫れる可能性がある。本稿では、第22回認知神経科学会教育講演IIにおける講演の内容から、既に学術論文にて発表済みのものを概説した。