【要旨】我々は、絵画を見るときに様々な印象評価を行う。特に、芸術における美しさの問題は、哲学史上、重要な問題であり、その脳メカニズムが明らかになることは哲学や美学と脳科学とをつなげる知見となる。本論文では、筆者らの研究において、美しさの脳内基盤として眼窩前頭葉の活動を見出し、また美しさの対極にある醜さが左感覚運動野の活動を引き起こすことを示した研究を紹介するとともに、絵画を含めた画像認知における印象評価研究について紹介する。特に美的判断は、顔に魅力を感じることとの一貫性のみならず経済的判断などの脳メカニズムとも重なり合い、その報酬系と呼ばれる神経システムに位置づけられることが明らかになっている。同時に、違和感という絵画認知における印象評価に関する脳内基盤についても紹介する。