認知神経科学
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画像による認知症の早期診断と鑑別
羽生 春夫
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2006 年 8 巻 3 号 p. 222-226

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抄録

【要旨】老年期の代表的な認知症といわれるアルツハイマー病(AD)、レビー小体型認知症(DLB)、血管性認知症(VaD)の早期診断と鑑別における画像検査の役割について概説する。MRIは脳の微細構造を含む形態学的変化の描出に優れ、ADの主病変となる海馬や海馬傍回(内嗅野皮質)を明瞭に識別できる。視覚的にも萎縮の評価は可能であるが、voxel-based morphometryによって客観的な形態学的変化の評価が容易となってきた。最近登場したVSRADという解析ソフトを用いると、早期ADやMCI患者で内嗅野皮質を含む側頭葉内側部の萎縮が検出でき、その他の認知症と比べてより高度な萎縮を確認できることからADの早期診断や鑑別に期待される。SPECT画像を3D-SSPなどから統計学的に解析すると、ADの病初期やMCIのrapid converter群では後部帯状回や楔前部の有意な血流低下が認められ、早期診断に活用できる。また、DLBでは後頭葉内側の血流低下が、VaDでは前頭葉や帯状回前部の血流低下がみられるなど、それぞれ特徴的な脳血流低下パターンを示すことから鑑別診断にも役立つ。形態画像や機能画像の統計学的解析によって、ADを代表とした認知症の早期診断や鑑別がいっそう容易となり、今後の薬物治療にも大きな貢献をもたらすものと期待される。

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