2015 年 30 巻 3 号 p. 594-601
目的:健康寿命の延伸において,高齢者の寝たきりの原因となる骨密度低下による骨折の予防は重要である.しかし,当センター人間ドックでの骨密度検査の受診率は,受診者全体の男性約2%,女性約25%足らずにとどまっている.そこで,骨密度検査を推奨するために,骨密度と動脈硬化関連項目との関係を検討し,ハイリスク項目を明らかにすることとした.
方法:2008年4月1日から2014年1月31日の間に,人間ドックで骨密度検査をはじめて受診し,CTによる腹部内脂肪測定を受けた女性321名を対象に,骨密度低下に関連があると考えられる検査・生活習慣項目について統計学的手法を用い因果関係の解明を行った.
結果:t検定では,以下の項目で有意差がみられた.p<0.001:受診時年齢,最高血圧,p<0.01:HbA1c,p<0.05:内臓脂肪,BMI,飲酒.χ2検定では,p<0.001:閉経,最高血圧,p<0.05:内臓脂肪,BMIであった.ロジスティック回帰分析では受診時年齢,皮下脂肪面積,HbA1c,総コレステロール,喫煙を説明変数としたモデルで正答率83.4%,適合度検定(Hosmer and Lemeshow)では,χ2値8.060,有意確率0.428>有意水準0.05で,もっとも良い結果が得られ,骨密度低下の予測に役立つことがわかった.
結論:χ2検定,t検定では一見関連がみられない喫煙をロジスティック回帰分析の説明変数に加えたことで,骨粗鬆症予測に大きく影響した.単項目間での関連に着目しがちだが,複数項目間の影響を考慮し,生活指導にあたる必要があると思われる.