人間ドック (Ningen Dock)
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巻頭言
総説
原著
  • ―肥満の有無,世代別における検討―
    柴田 智生, 松原 達昭
    2024 年 38 巻 5 号 p. 677-688
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/03
    ジャーナル フリー

    目的:2年間の体重増減が,血圧,血液検査値に及ぼす影響を,肥満の有無,および,世代別で検討した.

    方法:2018年度より3年連続で定期健康診断を受けた20~69歳の16,819名(男性13,419名,女性3,400名)を対象とした.2018年度にBMI25以上,または,腹囲が男性85cm以上・女性90cm以上の者を肥満,それ以外の者を非肥満とし,8群(20~39歳肥満,40~69歳肥満,20~39歳非肥満,40~69歳非肥満,それぞれ男女別)に分けた.対象者の2年後の体重変化を,5%以上減少,3%以上~5%未満減少,1%以上~3%未満減少,1%未満減少~1%未満増加(変化なし),1%以上~3%未満増加,3%以上~5%未満増加,5%以上増加に7分類し,血圧,血液検査値の推移を調査した.

    結果:40~69歳男性肥満者は,体重変化なしをreferenceとした場合,2年間に5%以上の体重減少により,収縮期および拡張期血圧,LDL-C,HDL-C,HbA1c,AST,ALT,γ-GTPの有意な改善が認められた.20~39歳男性肥満者では,5%以上の体重減少が収縮期血圧を除くこれらの指標を改善させた.一方,5%以上の体重増加により男性肥満者においてはすべての指標が悪化していた.40~69歳男性非肥満者では,5%以上の体重減少により,収縮期および拡張期血圧,LDL-C,HDL-C,ALTが改善していた.また,5%以上の体重増加により,HbA1c以外の指標が悪化していた.20~39歳男性非肥満者では5%以上の体重増減により血圧,脂質,肝機能に影響が及んでいた.なお,女性においては一定の傾向を認めなかった.

    結論:男性肥満者では,全世代を通じて,2年間で5%以上の体重増減が,血圧,脂質,耐糖能,肝機能に影響を及ぼすことが判明した.また,男性非肥満者のすべての世代において5%以上の体重変化が血圧,脂質,肝機能に影響を与えることが観察された.

症例報告
  • 仁田 まさみ, 野中 英臣, 前田 徹也, 藤井 博昭, 中條 恵一郎, 坂本 直也
    2024 年 38 巻 5 号 p. 689-693
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/03
    ジャーナル フリー

     57歳男性.当院人間ドックを受診,経鼻の上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy: EGD)で胃体下部大彎後壁に早期胃がんIIcを疑う10mm大の粘膜不整を認め,組織生検にて高分化型管状腺癌tub1であった.内視鏡的粘膜下層剥離術(endoscopic submucosal dissection: ESD)目的にて国立がん研究センター東病院(以下がんセンター)へ紹介.がんセンター病理部でも当院病理プレパラートを確認しほぼ同様の分化型管状腺癌tub1+tub2であった.その際のEGDでは,当院での指摘部位に同じく不整な白色領域を認め生検するもがんは検出されず,ひとかきがんの可能性が考えられ経過観察となった.がんセンターでの3ヵ月後のEGDでも前回と同様に生検は陰性で悪性を疑う所見は認めず,最終的にひとかきがんの診断となり,今後は1年毎の定期検査予定となった.治療前生検で消失したとされるがんを「生検消失がん」と呼び消化管での症例報告は散見される.臨床の現場では「生検消失がん」は稀少ではないが,今回人間ドック経鼻内視鏡によるスクリーニングで「生検消失がん」を経験したので若干の文献的考察を含めて報告した.

  • 山田 聡志, 江部 直子, 八幡 和明, 富所 隆, 杉田 萌乃, 髙村 昌昭
    2024 年 38 巻 5 号 p. 694-698
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/07/03
    ジャーナル フリー

    目的:人間ドックの上部消化管内視鏡検査(esophagogastroduodenoscopy: EGD)で指摘されたダビガトラン起因性食道炎(dabigatran-induced esophagitis: DIE)の2例について報告する.

    方法:当院人間ドックのEGDで指摘されたDIEと考えられる食道炎の2例.

    結果:症例1 76歳男性.心房細動にて68歳時からダビガトラン内服中.以前に食道症状ありEGDで食道に白色付着物を認めた.その後も食道の軽度の違和感を自覚していたが今回の人間ドック受診時のEGDで食道に膜様白色付着物を認め,面談時に内服方法の指導を行った.症例2 82歳男性.心房細動にて72歳時からダビガトラン内服中.以前の人間ドックでのEGDでは全周性に膜様白色付着物を認めることがあった.今回人間ドック受診時には食道症状の訴えはなかったがEGDでは食道全体に膜様白色付着物を認めた.かかりつけ医に連絡し,薬剤変更を行い,約1年後のEGDでは食道所見は改善していた.

    結論:ダビガトランは近年頻用される抗凝固薬であるが,それに伴う食道病変の報告も多くなっている.以前は薬剤含有の酒石酸が炎症の主原因とされていたが,ダビガトランそのものの細胞障害性による可能性が高く,その時期の内服方法で所見が変化する可能性もあり,同疾患が疑われた場合は詳細な問診と指導,酸分泌抑制薬などの処方,薬剤の変更の検討も必要であり,臨床医との密な連携が必要と考えられた.

委員会報告
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