人間ドック (Ningen Dock)
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巻頭言
総説
  • 井上 和彦
    2020 年 35 巻 1 号 p. 7-23
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

     がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(厚生労働省健康局長通知:平成28年2月4日一部改正)により,胃がん検診の方法として,従来の胃X線検査に加え,上部消化管内視鏡検査(内視鏡)も認められた.人間ドックにおいては,以前から内視鏡を導入している施設も多かったが,今後内視鏡の果たす役割が増えると思われ,習熟した技術で被験者に優しい内視鏡を行い,良好な精度を保つ必要がある.一方,胃がん発生にヘリコバクターピロリ(Hp)感染とそれに伴う胃粘膜の萎縮や炎症が強く関与していることが明らかになっており,内視鏡や胃X線の画像検査では背景胃粘膜の評価も重要である.また,血清Hp抗体や血清ペプシノゲン値,あるいは,その組み合わせによる胃がんリスク層別化検査(ABC分類)も有用であろう.そして,Hp感染状態に応じて発生しうる胃がんの特徴を理解したうえで検査を行うことにより早期発見につなげることができる.さらに,保険診療によるHp除菌と協調して胃がん発生リスクを低下させることも積極的に行うべきであろう.我が国におけるHp感染率は速いスピードで低下しており,今後上部消化管疾患のスペクトルが変わることが予想され,その対応も望まれる.

原著
  • 善家 新太郎, 長谷部 靖子, 山本 陽児, 渡邉 早苗, 八木 完
    2020 年 35 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:少子高齢化による労働力不足が深刻化するなかで,外国人労働者の活躍が期待されている.在留外国人は全国的に増加しており,愛媛県も例外ではない.当センター受診の外国人も増加しており,現在の受診状況を把握することにより今後の課題について検討を行った.

    方法:2017年度までの3年間に当センターで健康診断を受診した外国人を対象に国籍,性別,年齢,健診結果などを集計した.また,2018年度に当センターを受診した外国人が所属する事業所と愛媛県内の技能実習監理団体に健診および病院受診にかかわる問題点についてアンケートや訪問調査を行った.

    結果:外国人健診受診者は年々増加しており,2017年度の受診者は1,781名,健診受診者の1.3%を占めた.外国人受診者は東・東南アジアが93.8%,製造業従事者が56.8%を占めた.事業所アンケート調査では,今後,63.5%の事業所が外国人の増員を予定しており,問診票や検査方法,健診結果での各言語対応の要望があった.雇入時健診ではLJP(Limited Japanese Proficiency)かつ英語も話せない受診者も多かった.健診受診時は多言語対応翻訳機や平易な日本語の対応で実施できたが,所見があった場合には通訳が必要であった.

    結論:今後,ますます増加する外国人に対応するために,問診,健診,健診結果,保健指導も含め日本人と同等のサービスを提供するためには何が必要か,医療機関とどのような連携をとっていくか,早急な対策が必要である.

  • ―スタッフ間で初回面接導入時の説明内容を統一して―
    畑中 智花, 木戸 博美, 川嶋 真理子, 東川 美幸, 大塚 芽来美, 濵田 美津子, 尾上 恵美子, 阿座上 聖史, 宮崎 雅也, 武冨 ...
    2020 年 35 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:特定保健指導の初回面接開始の増加に向けて取り組んでいくために未実施者に着目すると,「自己管理をしたい」,「忙しい」という理由が全体の3割を占めていることが分かった.今回特定保健指導開始者増加を図るため,初回面接時の取り組みを行い,その効果を明らかにした.

    方法:対象は,取り組み前の平成28年7月~平成29年3月(以下H28年度と略)の特定保健指導対象者479名,および取り組み後の平成29年6月~平成29年12月(以下H29年度と略)の特定保健指導対象者460名.初回面接時のスタッフ間での説明方法の統一を図った.また特定保健指導開始を断る対象者へフローチャートに沿った追加説明を行い,その取り組み前のH28年度と取り組み後のH29年度の特定保健指導開始者数,開始率および未実施者の理由を比較した.

    結果:特定保健指導開始率は,H28年度は18.0%(86名)で,H29年度25.4%(117名)と増加がみられた.最初は特定保健指導の開始を断っていたが,その後フローチャートを用いて説明を行い開始になった者は2名であった.

    結論:今回の取り組みにより,積極的に特定保健指導の導入を行うようスタッフの意識が変化したり,受診者のモチベーションが上がったことで,特定保健指導の開始率増加につながる可能性が示唆された.

  • ―極値統計Gumbel法による定量評価―
    田内 慎一, 林 久仁彦, 大芦 研輔, 道家 充
    2020 年 35 巻 1 号 p. 38-46
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:低線量胸部CT画像の肺野内ストリークアーチファクト(streak artifact:以下SAと記載)に対してGumbel法を用いた定量評価を試み,Hybrid IR(Iterative Reconstruction)によるSA低減効果の特性について明らかにする.

    方法:16DAS CT装置Alexion(キヤノンメディカルシステムズ,栃木)を使用し,胸部人体ファントムの肺上葉部を撮影(管電流:10~50mA)した.評価対象画像再構成法は,オリジナル画像:ORG,SA低減従来法:Boost3D,Hybrid IR: AIDR 3D(プリセット強度:4種)の計6種とし,各評価画像を取得した.そして各画像でSAを含む肺野内にROI(region of interest)を設定し,得られたGumbel plotの相関係数から,肺野内SAの定量評価にGumbel法が適用可能か検証した.また各画像の位置パラメータからHybrid IRによるSA低減効果を検証した.

    結果:全評価画像のGumbel plotの相関係数rは0.963≦r≦0.997となり,r≒1であることからGumbel性が認められた.またHybrid IRは従来法と比べ位置パラメータが低く,その値も管電流に依存せず各プリセット強度でほぼ一定であった.

    結論:低線量胸部CT画像の肺野内SAの定量評価にGumbel法を適用することが可能であった.またHybrid IRは従来法と比べSAをより多く低減でき,低線量であるほどさらに効果的であることが示された.

  • 齋藤 良範, 柴田 香緒里, 安達 美穂, 後藤 明美, 阿部 明子, 庄司 久美, 正野 宏樹, 荒木 隆夫, 齋藤 幹郎, 横山 紘一, ...
    2020 年 35 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:心房細動(atrial fibrillation: AF)は,血栓性脳塞栓症の原因疾患であり予防には抗凝固療法が有用である.高齢者ほど有病率は増加するとされることから,健康診断受診者における有病率および治療の現状を把握し経年推移を検討した.

    方法:2017年度の受診者175,462(男性86,923,女性88,539)名の12誘導心電図(心電図)所見から,性・年代別のAF有病率および問診票より治療率を算出した.また,2013年から2017年度まで5年間のAF有病率の推移を検討した.

    結果:AF有病率は1.13(男性1.81,女性0.47)%で,加齢に伴い増加し各年代とも男性が高率であった.治療率は,60歳未満55.7%,60歳代68.8%,70歳代66.6%,80歳以上63.9%で,60歳未満で低かった.CHADS2スコアが1以上となる75歳以上では65.0%であった.AF有病率の経年推移は,2013年度1.03%,2014年度1.04%,2015年度1.10%,2016年度1.12%,2017年度1.13%と増加傾向が認められたが,男女別の年齢調整後の有病率には差を認めず受診者の高齢化が原因と考えられた.

    結論:AF有病率は1.13%で,男性に多く高齢になるほど増加した.60歳未満では未治療者が多く75歳以上でも35%は未治療であり,加療の必要性を啓発していく必要がある.

  • 能城 毅, 稲生 信一, 山本 晃大, 鈴木 智史, 北村 英之
    2020 年 35 巻 1 号 p. 54-59
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:人間ドック男性受診者に対し,血中PSA値に加えoptionでの前立腺MRI検査を施行し,前立腺がんMRI検診の有用性につき検討した.

    方法:2018年6月1日から2019年2月28日に人間ドック男性受診者のうち前立腺MRIを選択した22名を対象とし,年齢,PSA値,MRI結果,また,精査を要した症例に関しては精査結果も解析対象とした.MRIは1.5テスラの単純撮影で行い,T1強調像,T2強調像,拡散強調画像(b値1,000および2,000)とADC mapを基本とし,放射線科医による読影が行われた.直腸診は行っていない.

    結果:人間ドック男性受診者206名のうち22名(10.7%)がoption前立腺MRIを選択した.MRI選択受診者平均年齢は67.0±11.8歳,平均PSAは1.14±1.02ng/mLであった.22名中12名が前立腺肥大と診断され,平均PSAは,1.10±0.90ng/mLであった.PSAが4.0ng/mL以上の受診者は認められなかったが,PSA 3.54ng/mLとカットオフ値4.0ng/mL未満にもかかわらず前立腺右葉に拡散強調画像にて異常高信号を認め,精密検査の結果,中間リスク群前立腺がんであった70歳代受診者が1名存在した.

    結論:PSAに加え前立腺MRIを併用することによりPSAカットオフ値未満の臨床的に治療意義のある前立腺がんの検出力が向上する可能性がある.

  • 大江 理紗, 大橋 敦子, 遠藤 恵子, 佐田 伸夫, 安達 倫文, 光宗 皇彦, 市場 俊雄, 井上 和彦, 春間 賢, 清水 信義
    2020 年 35 巻 1 号 p. 60-65
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:便潜血陽性者への受診勧奨時,痔を理由に精密検査を前向きに検討頂けない受診者が多いと感じ,痔の現病歴・既往歴・自覚がある受診者の精密検査結果を追跡し,積極的な精密検査促進について検討した.

    方法:2016年4月~2018年12月に当センターで便潜血検査(2日法)を受けた110,813名を対象とした.現病歴・既往歴に痔核がある・受診勧奨時に痔の自覚があると申し出があったグループAと,現病歴・既往歴に痔核がない・受診勧奨時に痔の自覚があると申し出がなかったグループBの2グループに分け,精密検査受診率,有所見率および,異常所見の内容について,比較検討した.

    結果:グループAの精密検査受診率は39.2%(237/604),グループBの精密検査受診率は46.5%(2,361/5,082)であり,グループAで有意に(p<0.001)低かった.しかし,精密検査結果はどちらのグループも,約40%に大腸ポリープ,約2%に大腸がんが認められ,有意差はなかった.

    結論:大腸がんの予防・早期発見・早期治療のために,痔の自覚がある受診者に対しても積極的に精密検査を受診して頂けるよう促進していくことが重要と考えられる.

  • ―実施率と実施把握率向上に向けて―
    松本 智美, 照井 文, 旗持 芙美, 野崎 浩二, 林 建男
    2020 年 35 巻 1 号 p. 66-73
    発行日: 2020年
    公開日: 2020/10/07
    ジャーナル フリー

    目的:当施設では要精密検査や要治療判定者に対し,勧奨案内(以下勧奨)を2回送付している.さらなる勧奨返信率を期待すべく,今回未受診者・勧奨未返信者から得られたアンケート結果より今後の課題を明らかにした.

    方法:2019年1月の人間ドック利用者で前年度勧奨未返信者288名に,検査開始前に問診,検査終了後に未受診理由と未返信理由について質問紙法によるアンケート(複数回答可)を実施した.回答をもとに,行動変容ステージモデルに合わせて分析を行った.

    結果:勧奨未返信者のうち,105名は実際受診していた.未受診理由は「忘れていた・時間がない・毎年言われる・受診先に何を説明すればよいか分からない」などの回答があった.受診したが勧奨未返信の理由は「返信することに気が付かなかった・面倒さを感じた・忘れていた・次回健診時に伝えればよい」などの回答があった.

    結論:行動変容ステージモデルをもとに,各段階における未受診・勧奨未返信理由を分析し,アンケートの回答を無関心期・関心期・意図(準備)期に分けた.未受診者には,各段階に合わせた内容で受診につなぐための後押し(ナッジ)を行うことが大切であることが分かった.また勧奨未返信者は無関心期が多かったことから,勧奨することの意義を理解してもらい,広く伝えることで実施把握率の向上につながると考える.今後ITなどを取り入れ,より簡単に返信できる工夫を行い,実施把握率向上に努めたい.

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