NIRAモノグラフシリーズ
Online ISSN : 2758-2175
国際標準化の問題とアジアへの展望
森 直子
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2009 年 30 巻 p. 1-29

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抄録
グローバル経済化のなかで、国際標準化をめぐる動きは活発化し、経済の死活問題に直結する大きな課題となっている。本論では近年の国際標準化の問題点を 3 つ取り上げ、日本やアジアが直面する問題を考察する。第一の問題点は、「国際標準」が特定地域など偏った利益を代表することがあり、それが貿易阻害を助長する事態まで生じていることである。第二の問題は、世界統一標準を設定するなかで消費者便益を公平に保護する難しさの問題である。第三の問題は、国内標準と国際標準の整合化、及び調整過程で必要となる膨大な労力の問題である。このうち、後者二つに関しては、日本は、そもそも国内標準に消費者便益保護が体系的に取り入れられていない、また、膨大な労力の背景にある「縦割り行政」による弊害といった国内問題を克服せねばならず、苦しい立場での行動を迫られている。第一の問題に対しては、日本は他の国のように挙国一致体制での戦略的対応がとり難く、集中的に人材、費用を投資することへのコンセンサスが形成できずに苦慮している。しかし、こうした状況は、かえって日本が、混乱した状態にある「国際標準」の問題を整理し、国際貿易の円滑化と国際標準化とをバランスよく促進していくための議論を主導することを可能にすると思われる。国際標準化におけるアジア諸国との連携も、国際標準の課題解決の議論を、共に世界に問いかけていくことで築かれる。
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© 2009 公益財団法人NIRA総合研究開発機構
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