イギリスのEU離脱やアメリカのトランプ大統領就任を始めとして、先進各国では既成政治に対する否定的な動きが相次いでいる。こうした現象の奥底には、中間層の不安定化と政治本流の喪失といった「二重の政治的疎外」が潜んでいる。第4次産業革命とグローバル化により、中間層は職を奪われる不安や経済的ストレスにさらされている。政治においても、既成政治批判やメイン・ストリームの空洞化が進行している。こうした出来事は、課題先進国とも言える日本にとっても対岸の火事ではない。では二重の政治的疎外にどのような処方箋が書けるだろうか。中間層の不安定化に対しては、新しい日本社会の主人公としての中核層を提唱したい。従来の中間層が所得や職業を物差しとしていたのに対し、中核層は、人生や社会に対する意識の高さや政治・社会的機能に基準を置いている。政治本流の喪失に対しては、政党政治を立て直し、政党本位の政治を目指す必要がある。抜本的な2院制改革や、諸外国の投票制度を参考にしながら、国会を「熟議の府」としての性格を強める制度にする策などが検討の俎上に載せられるだろう。中核層と政党政治の立て直しという「日本型・2回路制民主政治」が今の日本には求められている。