国と地方はいかにその役割と財政的責任を分担すべきか。基本的な方向性として、国は標準的な公共サービスに責任を持ち、その財源を全額保障する一方、地方自治体はその上乗せや独自サービスについて限定的な財政責任(限界的財政責任)を負うべきである。また、少子高齢化をはじめ日本社会の状況が変化する中、交付団体と不交付団体の間に生じる財政力格差を一定の範囲内に抑える必要があり、地方交付税の再設計や、地方間の財政格差の是正が不可欠だ。さらに、補助事業の設定には地方の合意が必要であり、「国と地方の協議の場」の実質化が求められる。本稿では、各分野において必要な改革の方向性を具体的に示す。義務教育については、国が責任を持つべき教職員給与の財源を全額国費で負担する体制へ転換すべきである。社会保障においては、現金給付に係る給付費を国が原則全額負担し、現物給付や支援体制の整備は地方の一般財源で担うという役割分担の明確化が重要だ。デジタル化の推進においては、現金給付業務の一元化や標準化が必要であり、国主導での効率的な仕組み構築が求められる。これらの改革を直ちに実現することは容易ではない。しかしながら、少子高齢化が進む中、国と地方の長期的な持続性を目指して、今こそあるべき役割分担の方向性を再確認しなければならない。理想的な姿に近づくための改革の議論を直ちに開始すべきである。
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