NIRAオピニオンペーパー
Online ISSN : 2436-2212
「フリーワーカー」に対する法政策はどうあるべきか
大内 伸哉
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2019 年 44 巻 p. 1-6

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抄録

デジタライゼーションが進む産業社会で求められるのは、AIやロボットに代替されない、イノベーションを生みだす創造性をもつ人材だ。こうした人材は、雇用労働者のように時間や場所に拘束され、指揮監督を受けた就業環境ではなく、特定の企業に帰属せず、ICT(情報通信技術)を活用して自由に場所や時間を選択して能力をフルに発揮できる就業環境を求める。このように企業に雇われずに個人で働く人材(本稿では、これを「フリーワーカー」と呼ぶこととする)は、これまでは特段の政策的サポートの対象とされてこなかった。フリーワーカーは、雇用労働者とは異なりまだ少数派だし、自由な働き方ゆえ自己責任に委ねてよく、政府による保護の必要はないと考えられてきたからだ。しかし、デジタル社会の到来により、多くの人がネットを活用してフリーワーカーとして働くようになると、この働き方のもつ経済リスクを自己責任として放置するのではなく、むしろそれをできるだけ取り除くことが、産業政策的な観点からも、また国民の職業選択の自由の保障という観点からも望ましい。フリーワーカーをめぐる政策課題は、労働法、競争法、社会保障法、税法等の多くの分野にまたがるので、分野横断的に知見を結集して取り組んでいくことが必要だ。

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