抄録
NIRA総研が2023年2月4日に開催したNIRAフォーラム2023では、テーマ1として「熟議民主主義」について議論した。考え方に大きな世代間格差が存在する少子化政策について合意に達するには、人びとの間での熟議が不可欠である。どうすれば熟議を経た政策決定の仕組みができるか。1つは、新しい視点からの「アジェンダ設定」である。例えば、子育て支援では「人口減少」に直結する問題を設定し、従来の「現世代内」の問題設定でなく、「将来世代も視野に入れた」設定に変化させることが重要である。アジェンダ設定能力を持つ代表的なアクターとしてメディアがあるが、そこでの人材の成熟も不可欠である。もう1つは、「熟議プラットフォーム」の再構築であり、IT技術の寄与も期待される。兵庫県加古川市では、インターネットプラットフォームを活用した熟議の実践例がある。このような熟議は、国全体レベルの政策課題の場合には難しい面もあるが、地方自治体主導での熟議が国政レベルの議論につながる可能性もある。他方、政治が安定的で政権交代がほぼ起きず、行政が現場から得られる生きた情報を政治にぶつける力が弱まっているといった現状の日本の統治システム自体が、熟議による政策決定を阻んでいる懸念もある。