NIRAオピニオンペーパー
Online ISSN : 2436-2212
地方分権改革の30年を振り返る
国と自治体の役割分担の再定義を
宇野 重規松井 望
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2023 年 72 巻 p. 1-6

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抄録

地方分権改革の始まりを「地方分権の推進に関する決議」だとすれば、今年でちょうど30年となる。地方分権改革の現状に対する評価は多様である。30年前と比べ自治体の自主性、自立性が着実に大きくなっているという意見がある一方、コロナ禍などの緊急時対応やDXなどにおいてむしろ国の役割を強化すべきという主張や、個別法令や計画策定などを通じて、実質的に国のコントロールが残っていることを問題視する考えもある。これらの見方は、それぞれの置かれた立場や視角の違いを受けたものであり、必ずしも相互に矛盾するとは限らない。地方分権改革による制度面での変化を認めつつ、実際の運用において、真に分権化が進んでいるかについては、異なる評価になりうる。議論の焦点は、国と自治体の役割分担をいかに再定義し、その上で両者の関係をより円滑なものにしていくかにあるだろう。国のなすべきこと、自治体のなすべきことを平時と緊急時とで区別して検討していく必要がある。現状では、地方分権改革の意義を着実に実践している事例もあるが、今後、人口減少が進むなかで、人的、財政的リソースに余裕のない基礎自治体は増えていく。民間事業者の参入を含め、より広いネットワークで支えていく新たな仕組みを検討すべきだ。

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