抄録
熱傷瘢痕棘細胞癌化病巣(Broders grade 1)の基底層相当部について,とくにその基底膜付近と間質の変化とに注目して観察した。基底膜は一般に平坦であり,対面する細胞質膜上のhalf-desmosomeは,その分布が不均一であつた。half-desmosomeの長さが延長するとともに近接しており,対面する細胞質膜は軽度に肥厚しているごとくにみえる部がしばしば認められた。ときに細胞質膜,基底膜およびhalf-desmosomeの消失ないしは不鮮明化部や基底膜の部分的肥厚部がみられた。その部の間質中には,癌細胞由来と考えられるmicrovilli状ないしは偽足状の細胞質突起が多数認められた。癌巣間質中の膠原線経の走向は一般に乱雑で,部位によつては,これらに混じてアミロイド変性に陥つたと思われる低電子な細線維状構造物の集団がみられた。間質中には,電子密度の低い細胞質突起様構造物がしばしば多数認められた。