抄録
89才男子の右下腿に生じた黄褐色調の扁平隆起性腫瘍を報告した。組織学的に表皮は蕾状に真皮側にふくらみ, 周囲の正常角化細胞とほぼ同大でやや明るい腫瘍細胞が表皮内に充実性胞巣を形成し, 一見hidroacanthoma simplexのような全体像を呈していた。腫瘍細胞には大小不同や核の異型性がみられ, 一部に個細胞角化など異常角化を示すものがみられた。電顕的にも表皮内汗管への分化を思わせるような所見はなく, その所見はこれまでに報告されたBowen病の電顕所見とほぼ一致するものであつた。Intraepidermal epitheliomaの形をとるBowen病とhidroacanthoma simplexの鑑別はむずかしく電顕的検索が両者の鑑別に有用と思われた。