西日本皮膚科
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治療
2%ニトログリセリン軟膏の末梢循環に対する影響
—サーモグラフィーによる検討および膠原病に伴う難治性潰瘍への応用—
西岡 和恵小笠原 万里枝土田 幸枝倉田 佳子麻上 千鳥
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1989 年 51 巻 3 号 p. 532-539

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抄録

レイノー現象を示すPSS 8例, SLEおよびその疑いの各1例, 計女子10例の患者群, 正常人女子10例の対照群において, 2%ニトログリセリン軟膏の末梢循環に対する作用をサーモグラフィーを用いて検討した。外用の前, 5分, 10分および20分後に両手背(手指背を含む)のサーモグラム, 右手背, 右第3指背の平均皮膚温, および右手背の温度分布ヒストグラムを得て解析した結果, (1)サーモグラムでは, 時間の経過とともに高温域の拡大が, 両群の全例で認められた。(2)平均皮膚温の経時変化では, 両群のいずれの時期でも右手背および右第3指背で有意の上昇がみられ, また両群のレベルの差では, 右第3指背において対照群が有意に高かつた。部位別の検討では, 患者群での平均皮膚温は, いずれの時期においても右第3指背の方が右手背よりも低値を示したが, 対照群では差を認めなかつた。(3)温度分布ヒストグラムでは, 患者群で2∼多峰性の分布から, 低温域の減少に伴う1峰性の分布に移行する傾向がみられた。レイノー現象を示し, 手指あるいは足部に難治性潰瘍を有するPSS 5例, SLE 1例(女子5例, 男子1例)では, 1日3回の本剤の外用により6例中4例に潰瘍の治癒ないし縮小化が認められ, 有効であつた。以上より, 本剤は末梢循環の改善をもたらし, 各種末梢循環不全に基づく疾患に有用と考えられた。

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© 1989 日本皮膚科学会西部支部
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