抄録
慢性放射線皮膚炎上に有棘細胞癌が発生した3例の炎症性浸潤細胞について慢性放射線皮膚炎部分と有棘細胞癌部分のパラフィン包埋標本を4種のモノクローナル抗体を用いavidin-biotin-peroxidase complex(以下ABCと略す)法にて染色した。慢性放射線皮膚炎では浸潤細胞の50%はT細胞であり, 3例中2例において有棘細胞癌が慢性放射線皮膚炎と比較してT細胞の比率で低下していた。また有棘細胞癌においてnatural killer細胞の腫瘍巣内浸潤がみられたが, 慢性放射線皮膚炎では表皮内への浸潤は認められなかつた。慢性放射線皮膚炎患者1例について凍結標本における浸潤細胞を8種のモノクローナル抗体を用いABC法にて染色したところsuppressor/cytotoxic T細胞の比率がhelper/inducer T細胞の比率より高い結果を得た。