西日本皮膚科
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研究
皮下皮様嚢腫の28例
—特に病理組織学的所見を中心に—
松永 若利石原 剛吉永 愛子
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1992 年 54 巻 5 号 p. 927-931

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抄録

1973年Brownstein & Helwigによって分離, 提唱された皮下皮様嚢腫は胎生期の顔裂閉鎖時に, 骨の縫合線に沿って皮膚が迷入して発症するとされる疾患である。われわれは過去3年間に経験した28例について病理組織学的に検討した。その結果, 本症では手術時年齢によって, 嚢腫壁の構造や, 皮膚付属器の発達程度に差があることが判明した。生後1歳頃迄に切除された嚢腫では皮膚付属器の発達は未熟で, 嚢腫内腔に角化物が充満するが毛は少なく, 嚢腫は全周性に有棘細胞層よりなる嚢腫壁で取り囲まれている。その後加齢とともに, 皮膚付属器は発達し, 有棘細胞層よりなる嚢腫壁が異物肉芽腫によって置換され, 成人の摘出例では, 有棘細胞層は消失し, 完全に異物肉芽腫により置換されていた。また嚢腫内腔の角化物は減少し, 剛毛が多数存在していた。加齢とともに有棘細胞層が異物肉芽腫により置換されるという現象は興味深い所見と思われた。

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© 1992 日本皮膚科学会西部支部
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