西日本皮膚科
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症例
糖尿病性浮腫性硬化症
前田 尚子利谷 昭人
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1998 年 60 巻 4 号 p. 459-461

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抄録

60歳の男性。18年前に糖尿病に罹患し, 網膜症, 神経障害の合併も指摘されていたが, 最近数年間は無治療で経過していた。2ヵ月前からとくに誘因なく, 項部から上背部に皮膚硬化と違和感が出現した。初診時, 同部に指圧痕を生じない境界明瞭な板状硬の皮膚硬化性局面が認められた。検査で重症の糖尿病の所見がみられたが, ASO値, 免疫グロブリン, 自己抗体には異常は認められなかった。病理組織学的に真皮は肥厚し, 全層にわたり膠原線維の増生, 走行の乱れ, 離開, 間隙形成が認められた。真皮の中層から下層の膠原線維間, および下床の皮下脂肪組織の隔壁の一部にアルシャンブルー, コロイド鉄で陽性, ヒアルロニダーゼ消化性の沈着物が認められた。本症を糖尿病性浮腫性硬化症と診断し, 早急な糖尿病のコントロールとビタミンE剤の内服療法を施行した。半年を経過したところ, 違和感が軽度改善した。本症での皮膚および皮下脂肪組織の肥厚は, 組織の酸素分圧の低下や高血糖が線維芽細胞の膠原線維, ムコ多糖の産生を促進し, 組織間のムチン沈着をひきおこす結果と考えられている。末梢循環改善作用のあるビタミンE剤が自覚症状の軽減に有効であったことは, 本症の発症に糖尿病による微小血管障害が関与するという推測を支持するものと考えられた。

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© 1998 日本皮膚科学会西部支部
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