西日本皮膚科
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症例
リンパ腫型ATLLに対する化学療法後に, 日光角化症が有棘細胞癌へ進展した1症例
若杉 正司城野 昌義小野 友道大石 空松野 美智雄中野 賢三
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1999 年 61 巻 1 号 p. 37-42

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抄録
59歳時にくすぶり型を発症し, 4年を経過後リンパ腫型へ急性転化した成人T細胞白血病/リンパ腫(ATLL)に対して, 多剤併用化学療法(化学療法)をおこなった男性症例を報告した。本症例では化学療法開始から2ヵ月後に, 既存の日光角化症(SK)が有棘細胞癌(SCC)に進展した。四肢に始まり半年で全身に拡大した慢性湿疹様病変を主訴に初診, 病理組織および分子生物学的所見により, くすぶり型ATLLと診断した。副腎皮質ホルモンを継続的に内服·外用することで皮疹に対応, 皮疹は軽快·増悪を繰り返しながらATLLは安定した状態で経過したが, 4年後に系統的リンパ節腫大を発症した。節性リンパ腫と病理組織学的に診断(組織診断)し, 化学療法を施行した。すると左頬部の紅斑が急速に隆起し始め, CHOP療法を3クール施行後には拇指頭大の皮膚腫瘤を形成, SCCと組織診断された。なお本患者では, 顔面にSKが生じていることが半年前に組織診断されており, またSCCの診断後に顔面の2ヵ所でSK病変が発見され, さらにSKとSCC細胞のほとんどすべてがp53 protein (+)であった。ATLLの存在に起因する細胞性免疫の低下と, 化学療法によって惹起された低下が相俟って, SKおよびSCCが急激に発生·増大したと推察される。ATLL患者では, その診断時さらに化学療法を開始する前に, 臨床病型やATLL病変の拡がりだけでなく, 潜伏感染症の有無, 上皮内癌の有無, 細胞性免疫能などをチェックする必要がある。
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© 1999 日本皮膚科学会西部支部
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