西日本皮膚科
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治療
乾癬に対するシクロスポリン低用量療法の検討
狩野 葉子水川 良子早川 順塩原 哲夫
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1999 年 61 巻 6 号 p. 793-800

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抄録

最近, 皮膚科領域においても, 中等症から重症の乾癬患者に免疫抑制剤であるシクロスポリン(以下「CYA」とする)による治療が試みられてきている。今回, 24例の乾癬患者を対象に, CYAの初期投与量2.5mg/kg/dayを, 1日2回(朝食後および夕食後)4週間投与し, その後皮疹の程度に応じて, 0.5mg/kg/day∼1mg/kg/dayを適宜増減し, 最大投与量を5mg/kg/day, 最小投与量を1mg/kg/dayとし, さらに20週間投与し, CYAの乾癬に対する有効性及び安全性を検討した。その結果, 全般改善度で「改善」以上の評価を得られた割合は, 75.0%で, 開始時のPASIスコア32.5は治療終了時7.7と有意に低下し, 投与初期の75%以上PASIスコアが改善したことを「寛解」とすると, 試験期間中に寛解した例は18例(75.0%)と良好であった。副作用は, いずれも軽微であったが9例(37.5%)にみられ, その内訳は高血圧3件, 肝障害2件などであった。本試験の開始前に実施した患者アンケート調査では, 約半数の患者が“外観”を苦痛に感じており, また, アンケートの回答があった患者の45%が, 乾癬という疾患そのものに“イライラする”ことをあげていた。我々の行ったCYA低用量療法は, 従来のCYA療法に比べて金銭的な負担も少なく, 患者コンセンサスを得て用いれば, 患者QOLの向上につながる治療手段として非常に有用であることが示された。更に, CYA間歇内服投与法や外用剤との併用療法など工夫して用いることで, より効果的に安全に使用できる可能性を含んでいる。

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© 1999 日本皮膚科学会西部支部
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