2002 年 64 巻 1 号 p. 62-66
ブラジル在住歴のある患者に生じたparacoccidioidomycosisの2例を経験した。症例1は,38歳,女性。ブラジル生まれ日系3世。1998年6月に来日し,同年8月に皮疹出現,同年12月当科受診。上唇部,口唇および口腔内に有痛性の肉芽腫性病変を認め,圧痛を伴う頚部リンパ節腫張を認めた。組織学的に,巨細胞内にmultiple peripheral buddingを示す菌要素を認めparacoccidioidomycosisと診断した。イトラコナゾール1日200mg内服にて治療した。症例2は,55歳,男性。1964年にブラジル移住。1992年に出稼ぎに来日し,2年ごとに2週間ほどブラジルに帰国していた。2000年1月,下口唇および口腔内に肉芽腫性病変が生じ,症例1と同様の組織像を呈した。塩酸テルビナフィン1日125mg内服にて皮疹の軽快をみた。両症例からの原因菌の分離培養は不成功であったが,病理組織学的に本症に特徴的な所見を認めた。本邦報告は本症例を含め19例と少ないが,輸入感染症として念頭に置くべき疾患と考え報告した。