西日本皮膚科
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症例
銀杏皮膚炎の既往により早期診断できた銀杏中毒
久保田 由美子中山 樹一郎
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2006 年 68 巻 3 号 p. 269-273

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抄録

62歳,女性。40年来,毎日5~10個の銀杏を摂取していた。2003年2月,肺腺癌にて化学療法を受け一時的に寛解したが,1年後,脳,骨転移が判明し,2004年3月よりゲフィチニブを内服開始した。2004年9月下旬,銀杏を拾い素手で銀杏の皮をむき洗ったところ,1週後に下肢のそう痒性紅斑,顔面の浮腫性紅斑を生じ,10月上旬当科初診。銀杏皮膚炎の診断でステロイドの内服と外用で軽快した。4日後,50個の銀杏摂取の数時間後,顔面浮腫,意識消失,感覚性失語を生じ緊急入院。脳炎,肺癌の脳転移は諸検査にて否定され,銀杏中毒が最も疑われた。ビタミンB6内服にて言語障害も徐々に改善した。銀杏外種皮によるオープンテストでは48時間後に陽性となり,紅斑は3週間持続した。銀杏中毒は,銀杏に含まれる4-O-methylpyridoxineがビタミンB6に構造が類似しているため,γ-アミノ酪酸GABAの生成を阻害し,主に小児で間代性けいれんをひきおこし,時に致命的である。自験例は銀杏皮膚炎の既往により早期の銀杏中毒の診断と治療が可能であった。

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© 2006 日本皮膚科学会西部支部
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