抄録
85 歳,女性。初診の数カ月前より,右拇指球に辺縁に鱗屑を付し,周囲の健常部よりわずかに陥凹する境界明瞭な小豆大の紅斑が出現した。病理組織学的所見では,病変部は健常部と比較して明瞭な段差をもって階段状に角層が著しく菲薄化しており,circumscribed palmar hypokeratosis と診断した。活性型ビタミン D3 軟膏を 5 カ月間外用したところ,周囲との段差が解消された。本症例は原因や治療法,予後についてなどまだ多くの点で明らかになっていないが,拇指球や小指球などの好発部位に辺縁に鱗屑を伴う陥凹性の紅斑を認めた場合,本症にも留意して診療にあたるべきである。