西日本皮膚科
Online ISSN : 1880-4047
Print ISSN : 0386-9784
ISSN-L : 0386-9784
症例
盗血現象を認めた透析患者の手指壊死
村田 真帆園山 浩子増野 年彦郡谷 篤史古江 増隆
著者情報
ジャーナル 認証あり

2014 年 76 巻 1 号 p. 10-13

詳細
抄録

54 歳の男性。糖尿病に起因する慢性腎不全のため 13 年前に左前腕内シャントを作成し血液透析を開始した。初診の 6 カ月前に感染によりシャント閉鎖したため,右前腕に内シャントを新設し透析を継続していた。初診の 2 カ月前に外傷を機に右第 1~4 指,手掌,左第 2 指に壊死を生じ,保存的に経過をみていたが,右第1 指に感染を生じたため指節間関節で切断した。血管造影で,アクセス静脈への過剰な血流増加とシャント圧迫時の著明な末梢動脈血流増加 (盗血現象) の所見が得られ,手指の臨床症状と合わせて,内シャントによる steal 症候群と診断した。右上腕-橈骨動脈バイパス術を行ったところ手指血流は速やかに改善した。デブリードマン施行後,局所陰圧閉鎖療法を行い,潰瘍は治癒した。透析患者の皮膚病変は診断,治療に難渋することが多く,診察時にはより注意深い観察が必要である。

著者関連情報
© 2014 日本皮膚科学会西部支部
前の記事 次の記事
feedback
Top