西日本皮膚科
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綜説
がん治療と分子標的薬
藤澤 康弘
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2016 年 78 巻 3 号 p. 221-228

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抄録

悪性腫瘍の薬物治療は,分子標的薬の登場により大きく進歩した。分子標的薬は低分子医薬と高分子の抗体医薬とに大きく分けられるが,基本的にはある特定の分子を標的とした選択性の高い治療薬である。 低分子医薬は主に細胞内の腫瘍細胞の増殖にかかわる分子に作用するように,抗体医薬は細胞表面にある分子に結合して作用を発揮するように設計されている。これまでに多数の分子標的薬が上市しており,白血病における低分子医薬であるイマチニブや,乳癌における抗体医薬であるトラスツズマブはその治療成績の高さからいずれも治療の中心となっている。皮膚科領域でも 2014 年以降,悪性黒色腫に対する抗体医薬のニボルマブが承認されたのを皮切りに低分子医薬のベムラフェニブや抗体医薬のイピリムマブが相次いで承認された。ニボルマブやイピリムマブはいずれも免疫チェックポイント阻害剤と呼ばれ,腫瘍免疫を活性化することで効果を発現するのに対して,ベムラフェニブは悪性黒色腫にみられる活性型の変異 BRAF を抑制することでその効果を発現する。しかしいずれも単剤での治療効果は限定的であることから,他の治療との併用が今後の主流になっていくと考えられる。また,分子標的薬はこれまでの化学療法とは全く異なる有害事象を起こし,ときに致命的となることからその使用にあたっては充分な注意が必要である。

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© 2016 日本皮膚科学会西部支部
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