西日本皮膚科
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慢性肝疾患のかゆみの現状 ―― 慢性肝疾患患者 71 名に対するアンケート調査から ――
中原 真希子蜂須賀 淳一中原 剛士古庄 憲浩下田 慎治古藤 和浩古江 増隆
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2016 年 78 巻 6 号 p. 655-659

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抄録

かゆみは慢性肝疾患でしばしば認められる症状である。しかしその頻度やかゆみの程度についての報告は少ない。そこで,今回我々は原発性胆汁性肝硬変(PBC)や慢性 B 型・C 型肝炎患者を含む慢性肝疾患患者 71 名に対し,かゆみに関するアンケート調査を行い,かゆみの現状を明らかにすることとした。慢性肝疾患の患者のうち,約 5 割(36/71 名)でかゆみがあった。かゆみが生じる傾向は,PBC 患者と B 型肝炎や C 型肝炎に肝硬変を続発した患者で高く,とくに C 型肝炎に肝硬変を続発した患者では肝硬変の無い患者と比較して有意にかゆみが生じる割合が高かった。かゆみの程度は visual analogue scale で日中は 19.2±3.4,夜間は 25.9±4.1 であり,日中より夜間のかゆみのほうが強い傾向にあったが有意差はなかった。また,かゆみがあると回答した患者のうち外用薬や抗ヒスタミン薬の内服などのかゆみに対する治療を行っているものは約半数(17/36 名)であり,治療により約 8 割(14/17 名)の患者がかゆみは軽減すると回答していたが,かゆみの症状は持続していた。本研究では,これまでの報告と比較して,慢性肝疾患の中でかゆみを伴う患者の割合は高かった。慢性肝疾患のかゆみに対する既存治療の効果は十分とはいえない。新規治療薬である κ オピオイド受容体作動薬の治療効果の集積が期待される。

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© 2016 日本皮膚科学会西部支部
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