2017 年 79 巻 5 号 p. 447-454
最近,「precision medicine」がこれからの医療の目指すべき方向性の一つとして提唱されている。これまでの治療法の多くは,いわゆる,「平均的な患者 (average patient) 」を対象にして設定されていた。ところが,近年の医学・科学の進歩により,個人について以前に比べても膨大なデータが入手可能な時代となってきており,それらをもとに,より精密な患者個人の診断がなされ,同一疾患内においても,詳細なサブグループ分類が可能となることが推測される。そのサブグループ毎に,治療法や予防法を確立して医療を深化させる,という考え方を「precision medicine」と称し,従来の「personalized medicine」を一歩進めたものととらえられている。 アレルギー疾患の分野においても,これから,このような考え方をもとにして,医療の再構築がなされることが推察される。本稿においては,アトピー性皮膚炎について,「precision medicine」の考え方を基盤として,これからの治療戦略がどのように進んでいくか,ということについて述べることとしたい。