西日本皮膚科
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症例
Trichophyton verrucosum 感染症の 2 例
――いわゆる生毛部急性深在性白癬と小児のケルスス禿瘡――
正 百合子山手 朋子酒井 貴史生野 知子石川 一志竹尾 直子藤原 作平安西 三郎竹中 基宇谷 厚志西本 勝太郎亀井 克彦安澤 数史望月 隆波多野 豊
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2019 年 81 巻 6 号 p. 517-522

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抄録

Trichophyton verrucosum(T.verrucosum)感染症は,主にウシからヒトへと接触感染する人畜共通感染症として知られ,ヒトに感染した場合には一時的に激しい皮膚症状を来すことがある。小膿疱が多発融合して隆起し,中心治癒傾向の乏しい浸潤性紅斑局面をとることもあり,診断に苦慮する例も多い。今回,診断が遅れた結果,ステロイド外用剤により難治となった,いわゆる生毛部急性深在性白癬と小児のケルスス禿瘡を経験したので報告する。症例 1:50 歳,男性。畜産農家。左前腕伸側に小膿疱を伴う暗赤色の紅斑性局面を認めた。痂皮の KOH 標本にて分枝した糸状菌を認めたため,いわゆる生毛部急性深在性白癬と診断し,イトラコナゾール(以下 ITCZ) 125 mg/日の内服とネチコナゾール塩酸塩(以下 NCZ)の外用を約 9 週間行い軽快した。症例 2:7 歳,男児。自宅の流し台の棚の開き戸で頭部を受傷し,生じた潰瘍は難治で排膿を認めた。母子ともにウシとの直接的な接触歴はないが,母親の勤務先には牛舎があった。病変部の毛髪の KOH 標本にて菌糸,胞子を認めたため,ケルスス禿瘡と診断し,テルビナフィン塩酸塩 60 mg/日の内服,NCZ の外用にて加療を約 4 週間継続したが,効果が乏しく,ITCZ 150 mg/日の内服と白色ワセリン外用を約 16 週間継続し軽快した。形態学的特徴と遺伝子解析にて症例 1,2 ともに原因菌は T.verrucosum と同定した。

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© 2019 日本皮膚科学会西部支部
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