西日本皮膚科
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症例
経時的な色調変化を認めた乳児筋線維腫症の 1 例
西 純平永瀬 浩太郎井上 卓也
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2021 年 83 巻 6 号 p. 519-522

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抄録

1 歳 10 カ月,男児。生後 2 カ月で陰囊部に結節が出現し,徐々に増大した。生後 6 カ月時点では暗赤色だったが,当院初診時には淡紅色へ色調が変化していた。切除検体の病理組織学的所見は境界明瞭な結節性病変で,深部では円形から短紡錘形の細胞が増殖し,上部では紡錘形細胞が束状に増殖する二相性パターンを呈した。免疫組織化学染色で腫瘍細胞はビメンチンと αSMA に陽性,デスミンと S100 蛋白に陰性を示した。以上より乳児筋線維腫症と診断した。乳児筋線維腫症は稀な間葉系疾患だが,乳幼児期に生じる線維性腫瘍としては最も一般的で,皮膚,皮下組織,筋肉,骨,内臓に単発から多発する腫瘍を特徴とする。単発型,多中心型,全身型の 3 病型に分類され,単発型と多中心型は切除や経過観察により治癒や自然消退が望めるが,全身型は内臓病変を伴い,一般に予後不良である。全身型の多くは生下時すでに病変が存在しており,生後早期に内臓病変に伴う呼吸循環器系や消化器系の合併症により死亡することが多い。自験例は 1 歳 10 カ月の単発性病変で内臓病変を疑う症状がなく,全身型の可能性は極めて低いと判断した。現時点で画像検査は行わず,乳児筋線維腫症の単発型として再発や内臓病変に注意しながら慎重に経過観察を行っている。また初期はより紅色の強い結節であり,当時は多数の毛細血管の周囲を未分化な細胞が取り囲みながらシート状に増殖する単相性パターンを呈していた可能性を考えた。

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