2009 年 58 巻 4 号 p. 619-622
今回我々は,高齢者の不安定型橈骨遠位端骨折に対する手術療法と保存療法とを比較した.手術群は7例8関節で術式の内訳は創外固定4例,pinning 2例,創外固定とpinning併用が2例であった.保存群は9例9関節であった.平均追跡期間は手術群1年10カ月,保存群1年2カ月であった.X線学的評価はulnar plus variance(UV),volar tilt(VT),radial inclination(RI)を計測し,手関節機能評価にはROM,握力を測定し,Cooneyと斉藤の評価法を用いて評価した.X線上手術群は良好な整復位がとれたが,徐々に短縮変形が進行しUVは最終的に受傷時レベルまで悪化した.掌屈に関してのみ手術群61.9°に対して保存群45.6°と有意差を認めたが,その他のROMや握力に有意差はなかった.
斉藤の評価ではgood以上が手術群で87.5% に対し,保存群で88.9% と有意差はなかった.高齢者ではたとえ変形治癒となってもADLに支障なく満足度も高い結果が得られており,青壮年と違って変形に対する許容範囲が広く,生活背景に基づいた治療法の選択が望まれると考えられた.