整形外科と災害外科
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膝前十字靭帯再建術後に肺血栓塞栓症を発症した1例
伊藤 仁鬼木 泰成中村 英一唐杉 樹岡元 信和高田 興志水田 博志
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2013 年 62 巻 3 号 p. 474-478

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抄録

症例:16歳,男性.左膝前十字靭帯(ACL)損傷および内側半月板損傷に対し再建術と半月板縫合術を施行した.術前のD-dimer値は0.5μg/ml未満であった.術後に静脈血栓塞栓症(VTE)を疑う理学所見は認めなかったが,術後1週の定期血液検査でD-dimer値が10.5μg/mlであったため,造影CT検査を施行したところ,左内腸骨静脈内の浮遊血栓と右肺下葉の肺血栓塞栓症(PTE)を認めた.直ちに抗凝固療法と下大静脈フィルターの留置を施行し,2週間後に血栓の消失を確認し,フィルターを抜去した.術後4ヶ月の現在,特に症状なく経過している.考察:ACL再建術術後におけるPTEの発生頻度は0―0.2%と稀であるものの,死亡例も報告されている.若年者が大半を占めるACL再建術においてもPTEの発症を十分念頭に置いた術前検討と周術期管理が重要である.

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© 2013 西日本整形・災害外科学会
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