2013 年 62 巻 4 号 p. 844-850
頸椎損傷の再建術の際に椎骨動脈(VA)損傷などの合併症を防ぐとともに手術の低侵襲化を図る方策を検討した.対象は2005年3月1日から2012月2月29日に治療した中下位頚椎頚髄損傷の49例,年齢は27-89歳(平均57.0歳),観血的治療は46例に行われた.VA損傷はMRIのT2横断像でFlow voidの消失でスクリーニングした.VA閉塞は49例中14例(28.5%)であり,VA塞栓術は7例に行われた.手術術式は,前方法はPlate併用前方固定(AF)が17例,後方法は,椎弓根スクリュー(PS)が16例とPS+外側塊スクリュー2例で計18例,さらに前後合併が棘突起wiring+AF 2例とPS+AFが2例で計4例,2011年7月に開始した後側方法で最小侵襲手技によるPS(MICEPS)が7例であった.術後VA損傷による小脳梗塞は2例で,PSとAFの各1例に発生していた.頸椎外傷におけるVA損傷はPSによる損傷だけでなく,受傷時の血管内膜損傷により術後に血栓が遊離し,小脳脳幹梗塞を起こすことがある.したがって,術前にVA損傷があれば塞栓術を行い,後側方アプローチで損傷側のPSをMISで行うのが安全かつ低侵襲と思われる.