2014 年 63 巻 4 号 p. 816-818
大腿骨近位部骨折の多くは高齢者に対する手術であり,入院後合併症によって不幸にも退院できずに死亡される症例もある.今回我々は大腿骨近位部骨折患者の死亡例について検討したので報告する.対象は2003年から2012年の間に当院へ入院した65歳以上の大腿骨近位部骨折1159例のうち,入院中に死亡した37例.死亡原因は肺炎14例,循環器疾患9例,脳血管障害3例,窒息・肺塞栓・腎不全・敗血症・癌死2例,不明1例であった.基礎疾患は高血圧17例,高血圧を除く循環器疾患11例,脳血管障害12例などが続いた.手術施行例のみでは術後2週間以内では急性心不全・腎不全,肺塞栓,また術後2週間以降では肺炎の占める割合が高かった.これらはいずれも予防できる可能性があり,手術的加療を検討する際には術前評価や循環動態の管理,また肺炎予防のため嚥下機能の評価・訓練や口腔ケアなどの対応が必要である.