整形外科と災害外科
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大腿骨転子部骨折の小転子骨片により動脈損傷を生じた1例
柴田 光史尾上 英俊中村 厚彦亀川 史武野田 昌宏稲光 秀明
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2016 年 65 巻 3 号 p. 523-525

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抄録

【はじめに】大腿骨転子部骨折に伴う仮性動脈瘤の報告は本邦では未だに少ない.今回,我々はその中でも極めて稀な合併症である小転子骨片により仮性動脈瘤を生じた1例を経験したので報告する.【症例】90歳女性,屋内で転倒後歩行困難な状態となり,当院へ救急搬送された.単純X線写真では左大腿骨転子部骨折(Jensen分類5型)の所見であり,受傷後4日目で観血的骨接合術を施行した.術後4日目に左大腿部腫脹,急速なヘモグロビン値の低下を認めた.造影CTにて外側大腿回旋動脈に仮性動脈瘤を形成していたため,緊急でコイル塞栓術を施行した.術後左大腿部腫脹,貧血は速やかに改善した.【考察】大腿骨転子部骨折での小転子骨片による血管損傷は非常に稀な合併症であるが,発生すると致命的である.小転子骨片が内方転位した症例に関しては,血管損傷の可能性を常に念頭に置き治療方針を立てる必要がある.

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© 2016 西日本整形・災害外科学会
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