2017 年 66 巻 4 号 p. 811-813
妊娠中の女性では凝固系亢進に伴う血栓傾向,手術の際には薬剤の使用や侵襲に伴う胎児リスク等の問題があり,妊娠中の母体の骨折に対する明確な治療方針は存在しない.今回我々は妊娠後期の下腿骨折2症例に対し保存および手術治療を行ったので報告する.保存治療を行った症例では外固定も一因と思われる深部静脈血栓症(DVT)から肺塞栓症(PE)を発症していた.手術治療例では,他科とも十分協議の上手術施行し,合併症を起こすことなく治癒した.手術適応のある妊婦の骨折治療では,産科,麻酔科,患者及び家族とも十分協議の上,手術も含めた治療方針をしっかりと検討する事が必要と思われた.またどちらの治療法でも妊婦に特有の合併症にも留意しながら治療を進めてくことが重要と思われた.