2023 年 72 巻 4 号 p. 813-816
57歳女性,IgA腎症による慢性腎不全のため28年前から血液透析中.4か月前に誘因なく左股関節痛が出現したため当科外来を受診した.初診時の単純X線像で,左股関節の関節裂隙の狭小化を認め,2か月で骨頭圧潰と寛骨臼の破壊が進行し,急速破壊型股関節症と診断した.手術は前方アプローチでDual mobility cupを用いたTHAを行った.病理検査で関節包にアミロイド沈着を認めたことから透析性アミロイド股関節症と診断した.術後2年経過し,現在,疼痛なく歩行可能で,インプラントの緩みや脱臼はない.透析性アミロイド股関節症は,アミロイドがインプラント骨境界に侵入し,早期の緩みや肥厚した関節包の切除により易脱臼性をきたすことがある.本症例は,初期固定性が良好で,脱臼抵抗性の高いDual mobility cupを用いてTHAを行い,経過良好である.