1996 年 45 巻 2 号 p. 597-601
肘部管症候群術後の第一背側骨間筋のエネルギー代謝を31P-MRS法にて測定し, 筋肉機能の評価を行なった.
片側罹患の肘部管症候群術後7症例 (男性5例, 女性2例, 平均年齢62.1歳, 平均術後観察期間5.8年) において, (1) 尺骨神経の伝導速度 (MCV) および終末潜時の測定 (2) 超音波断層による第一背側骨間筋の筋断面積の測定 (3) 第一背側骨間筋の最大随意収縮力 (MVC) の測定 (4) 31P-MRS法による安静時および運動中, 運動終了時の第一背側骨間筋のエネルギー代謝の測定等を行なった.
《結果・考察》患側での肘部MCVの低下や, 第一背側骨間筋MVCの低下が認められたが, 単位面積当たりの静的収縮力, 筋細胞内pH, 安静時のPi/PCrには有意差はなかった.
肘部管症候群においては, 筋の量的回復より質的回復が先行すると考えられる. 患側の運動終了時のPi/PCrの高値は, 筋疲労を起こしやすい状態の残存と考えられる.