1982 年 79 巻 5 号 p. 1090-1097
消化性潰瘍患者で胃内胆汁酸濃度を測定し,十二指腸球部および幽門輸(以下:球部,幽門)の変形の程度と内視鏡的に胃びらんの有無,また切除胃で慢性胃炎の程度とを比較検討した.胃内胆汁酸濃度は潰瘍患者で高いものが多く,健常例に比べ有意であつた.(43例中23例.p<0.01).十二指腸潰瘍および胃・十二指腸併存潰瘍では球部,幽門の変形が強いもので胆汁酸濃度が高値を示すものが多く,また慢性胃炎も強い傾向がみられた.びらんの発生は十二指腸潰瘍で多く最高酸分泌量との関係が濃厚であつた.以上の結果より,球部,幽門の変形は逆流防止機転の破綻に関与し,胆汁酸の逆流増加は慢性胃炎を増強させる一要素であることが示唆された.