クローン病(CD)の患者数は,世界的に増加傾向である.“Window of opportunity”を逸することなく適正な治療を行うには,早期の診断確定が望まれる.したがって,カプセル内視鏡やバルーン小腸内視鏡,さらにCTやMRIなどの機器やバイオマーカーを用いた効率良い診断体系の構築が必要である.分子標的薬の普及によりCDの治療は進化している.それらを有効に用いるには病態や病変分布,重症度を把握して寛解導入治療を選択すること,寛解維持のためにTreat to targetを実践し,適切なモニタリングが重要である.本稿では疫学や診断を中心にCD診療の最前線と課題について概説し,本特集の総論としたい.
クローン病は,消化管全域に病変を発症する慢性炎症性腸疾患であり,病態の評価を画像診断だけで行うことは時に困難である.近年,腸管粘膜の免疫に関与する細胞や分子をターゲットとする治療法が臨床応用されるようになり,症状だけではなく,炎症の状態を客観的に評価することが重要になっている.また,薬剤の効果判定を適切に行い治療を最適化することが,入院や手術などを回避し患者の予後改善に有用なことが報告されている.内視鏡などの画像検査による病態評価に加えて,腸管炎症を非侵襲的に評価可能なバイオマーカーを適宜使用し適切に評価することがクローン病の診療に重要であり,具体的なバイオマーカーの指標の設定が必要と考える.
慢性炎症性疾患であるクローン病は,再燃と寛解を繰り返すことによる高い手術率や腸管障害蓄積が課題であった.近年では,複数の分子標的治療薬が開発され,質の高い長期寛解が可能になりつつある.治療法は,疾患活動性や合併症の有無などに応じて選択されるが,その長期的な治療目標として,質の高い寛解の早期達成とその長期維持が重要とされる.臨床症状の改善だけでなく,バイオマーカーや内視鏡的所見をもとに治療最適化を行うTreat to Target戦略がその目標達成のために提言されている.一方で,選択肢の増加が最適な治療法決定を困難にしている側面もあり,患者と医療従事者間での共有意思決定が極めて重要となる.
クローン病に対する内科治療が進歩し,良好な経過が得られる症例が増加した.手術率や再手術率は低下しつつあるものの,内科治療では改善できない病変に対し手術を要する症例が現存する.また,本邦で高率に合併する肛門病変は生活の質を低下させ,臨床上重要な病変であるものの治療には未解決の問題が多い.長期経過例に合併する炎症性発癌が増加しつつあり,本邦では直腸肛門管癌が多い.診断が難しく,進行癌で発見される症例が多く予後が不良であり,早期診断法や根治治療の確立が望まれる.現況でクローン病症例により良好な経過を提供するためには,内科治療とともに外科治療の適応を的確に判断して併用する必要がある.
小児のクローン病患者数は,国内外ともに増加傾向にある.小児では診断時から広範囲病変を有し,治療抵抗性の重症例の占める割合が多いほか,内視鏡的に非典型像を呈することも少なくない.診断に際しては,小腸を含む全消化管の内視鏡的評価と生検組織の病理学的評価を行うことが国際的にも推奨されている.特に6歳未満で発症する超早期発症型炎症性腸疾患では,原発性免疫不全症候群の除外とともに,治療抵抗例ではmonogenic IBDの遺伝子検査の実施も検討する.治療においては,安全性やQOL,成長を考慮した治療選択に加え,患児や親の不安,学校などの集団生活への配慮,予防接種や将来の移行医療も見据えた診療が求められる.
われわれは門脈圧亢進により形成される腹腔内シャントに着目し,DAAにてSVRを達成した症例においてシャント径が治療前後でどのように変化するか検討した.当院にてC型肝硬変に対しDAA治療にてSVR24を達成した症例のうち,CTが撮影されていた83例を対象とした.腹腔内シャント径が20%以上変化した場合を,増大あるいは縮小として解析を行った.29例に腹腔内シャントの増大を認めた.増大に関連する因子を多変量解析すると,DAA治療終了時のFIB4 indexが検出された.C型肝硬変に対するDAA治療後の腹腔内シャントの増大には,治療終了時のFIB4 indexが最大の因子であり,線維化の影響が考えられた.
われわれは閉塞性大腸癌術後のhigh output stomaを契機に診断されたランブル鞭毛虫症の1例を経験したので,報告する.症例は67歳男性.閉塞性大腸癌にて右半結腸切除術施行を受けたが,回腸吻合部口側に人工肛門造設となった.術後人工肛門からの便汁排出が多く改善しないため,便塗抹鏡検をしたところランブル鞭毛虫を認めた.メトロニダゾール内服にて便排出量は減少した.便塗抹鏡検が必要であると痛感した.
症例は33歳女性.右下腹部痛を主訴に近医を受診し,回盲部炎疑いで当院紹介となった.入院加療とし,第3病日に穿孔性虫垂炎の診断で腹腔鏡下虫垂切除術を施行したが,炎症反応上昇が遷延したため術後遺残膿瘍と診断した.膿瘍ドレナージが必要と判断,第26病日にEUS下経直腸的ドレナージを施行,経過良好で第31病日に退院した.骨盤内膿瘍に対してEUS下経直腸的ドレナージを施行し,膿瘍の改善を認めた症例を報告する.
症例は,60歳代,男性.造影CT検査にて右骨盤腔内と左腋窩に腫瘤を指摘され,精査施行.SonazoidⓇ造影超音波検査で,右骨盤腔内腫瘤は早期より求心性に中心部まで造影後,中心部より抜けて,後血管相ではwash outされた.血管奇形も鑑別に挙がった.右骨盤腔内腫瘤の摘出術施行.病理組織学的所見は毛細血管奇形.後腹膜腫瘤に対してSonazoidⓇ造影超音波検査は診断の一助になり得ると考えられた.