日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
各種治療法別の小肝細胞癌の予後
100例における検討
田辺 雄一大西 久仁彦竜 宗正山本 宏碓井 貞仁磯野 可一桧山 義明後藤 信明岩間 章介大槻 俊夫中山 隆雅高円 博文鈴木 直人野村 文夫奥田 邦雄
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キーワード: 小肝細胞癌
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1987 年 84 巻 5 号 p. 1068-1076

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抄録

過去9年間に診断された腫瘍径5cm以下の小肝細胞癌100例について, 治療法別および Child 分類別に生存率を比較検討した. 50%生存期間は, 手術例 (n=34) で35.0カ月, 動脈塞栓療法TAE (n=20) で28.8カ月, 動注療法IAC (n=25) で10.6カ月, 無治療例 (n=17) で9.7カ月であり, また治療法に無関係に診断時 Child 分類でみると, A群 (n=37) で37.1カ月, B群 (n=37) で16.2カ月, C群 (n=26) で1.6カ月であつた. 次に Child 分類ごとに, 各種治療法別の予後を比較検討した. Child A群では, 手術例の生存率がTAE, IACよりも良く, B群ではTAEが良好であつたが, 共に有意差はなかつた. C群では, 各種治療法および無治療例で生存率に差がなかつた. 以上の結果より, 腫瘍径5cm以下の小肝細胞癌の予後は, 治療法および Child ステージに大きく依存していた. また選択すべき治療法として, Child Aでは手術が, Child BではTAEが考えられた. 主な死因は, 治療法と無関係に肝不全であつた.

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