1992 年 89 巻 10 号 p. 2586-2593
ANITによる実験的胆汁うつ滞モデルをラットに作成し, UDCAの治療効果を血液生化学, 病理組織学的に検討した. ANITは40mg/kg体重量を経口1回投与し, UDCAは水溶液で1週間投与した. ANIT投与後の胆管上皮細胞の変性•壊死期にUDCAの減黄効果はなく, 血中CDCA, DCA, LCAが上昇し, 組織学的にも肝障害が増悪した. その後, 胆管上皮細胞の再生•増殖期になり, 主に利胆作用によると考えられるUDCAの有意の減黄効果が認められた. すなわち, ANITによる胆汁うつ滞では胆管上皮細胞障害の回復期にUDCAは有効で, 障害の強い時は胆汁酸による肝細胞障害が出現すると考えられた.