1995 年 92 巻 12 号 p. 1929-1936
慢性肝疾患の治療に広く用いられるクリチルリチン製剤の血中動態について検討した.静脈内投与されたグリチルリチンの血中濃度は投与終了直後から減衰し始め,その減衰程度は慢性肝炎患者て肝硬変患者より大きかった.ICGR15とグリチルリチンの血中からの消失速度との相関をみるとICGR15が高値を示す群ほとグリチルリチンの消失が遅延する傾向を認めた.一方,副作用の一因とされる代謝産物である血中グリチルレチン酸濃度はグリチルリチンよりやや遅れて上昇し,いったん低下した後緩やかに再上昇した.その濃度は有意差はでなかったものの肝硬変患者で1曼性肝炎患者より常に高値てあった.肝機能の低下した肝硬変患者てはグリチルリチン静注後,血中グリチルリチン.グリチルレチン酸ともに高濃度になりやすく,長期投与に当たって考慮すべき点と考えられた.