膵癌の細胞間および細胞外マトリックス接着における細胞表面上糖鎖抗原の関与を,glycosylation inhibitorによる接着変化を中心に検討した.ELISAによりSW1990細胞は糖鎖抗原の強い発現を示し,浸潤および肝転移能との相関が認められた.O-linked glycosylation inhibitor(Bzl-GalNAc)処理にてSW1990細胞のMatrigel,lamininおよびtype IV collagenへの接着能は有意に増強し,また凝集能の増強も認められ,これら増強効果は精製ムチン添加にて抑制された.以上よりSW1990細胞表面上O-linked糖蛋白は細胞外基質および細胞間接着を阻害する傾向にあり,この糖鎖抗原発現変化に伴う接着能の変化も糖鎖強発現細胞の高転移性の一部に関与しているものと考えられた.