日本消化器病学会雑誌
Online ISSN : 1349-7693
Print ISSN : 0446-6586
肝硬変(肝癌合併例を含む)上部消化管出血例に対するsystemic inflammatory response syndrome(SIRS)概念導入の臨床的有用性について
湯浅 志郎貴志 文俊森井 和彦森下 博文奥新 浩晃
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1997 年 94 巻 10 号 p. 643-648

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抄録

肝硬変(肝癌合併例を含む)38例(35名)の上部消化管出血(GIH)例にSIRS概念をretrospectiveに適用し次の成績を得た.(1)GIH時に25例/38例(66%)がSIRS発症例と診断された.(2)GIH後60日までの死亡率はSIRS発症例(50%)においてnon-SIRS症例(8%)に比し有意に高く,GIH時SIRS発症の有無は予後を推測する臨床的な指標として有用と考えられた.(3)GIH時もしくはGIH後にSIRS診断基準4項目陽性例およびGIH後のSIRS持続5日以上例は,SIRS死亡群においてSIRS生存群に比し有意に多く,これらの項目はSIRS発症例のなかからさらに重症化する危険なSIRS症例を判別する指標になりうると考えられた.(4)SIRS概念は慢性疾患である肝硬変の急性増悪をとらえる指標としても有用であると考えられた.

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