2020 年 2 巻 p. 10-13
midCABG(minimally invasive direct coronary artery bypass grafting)は吻合できる冠動脈が限られることや視野が得にくいことなどから,実施される機会は多くないとされるが,その低侵襲性により,経皮的冠動脈形成術(PCI)と組み合わせたハイブリッド治療とともに,近年見直されつつある.症例は82歳,男性.約半年前に急性心筋梗塞として冠動脈左前下行枝(LAD)に緊急PCIが施行された.フォローアップの冠動脈造影で,LAD分岐直後の99%狭窄が指摘され,冠動脈バイパス手術の適応とした.年齢や身体機能的な制約からmidCABGを選択したものの,実際に開胸すると冠動脈が強く石灰化しており,通常の吻合は困難と思われた.冠動脈の内膜離を可及的に行い,大伏在静脈グラフトを用いたon-lay patchとして吻合を行うことで,胸骨正中切開へconversionすることなく手術を完遂することができた.