香川大学看護学雑誌
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ALS患者介護者のTPPV装着決定に関与した心理的葛藤とTPPV装着後の介護
ALS患者介護者のTPPV装着決定に関与した心理的葛藤とTPPV装着後の介護
山本 麻理奈清水 裕子
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2021 年 25 巻 1 号 p. 33-39

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抄録

人工呼吸器装着の意思決定とその後の療養生活の継続には家族の存在が大きく影響する.中でも人工呼吸器装着を決定した患者は長期の療養となることが多いため,介護を継続する要因について検討することは重要である.そのため,人工呼吸器装着の意思決定時の経緯をふまえ,本研究の目的は,ALS患者家族のTPPV装着決定に関与した心理的葛藤を明らかにし,今後のTPPV装着後の療養生活に与える影響について示唆を得ることである.

患者の長期間に及ぶ介護を継続している家族らの肯定的/否定的な心情を明らかにすることを目的にインタビューガイドを用いた半構造化面接法によるインタビューを実施した.対象者はALS患者の家族介護者6名であり,呼吸器装着の際の決定者は患者が3名,介護者が3名であった.

その結果,介護者らは【受療アクセスの距離感】,【呼吸器が愛着と義務をつなぐ】,【疲労蓄積から自己拡散に向かう】,【社会から孤立する患者と看護師からのまなざし】,【患者のプレゼンスに繋がる介護者の愛情】と要約されたTPPV装着決定に関与した心理的葛藤を抱きながら介護を行っていた.

人工呼吸器装着の意思決定時に患者と家族の間で装着の同意が得られなかった場合,人工呼吸器装着後の療養生活が,自身の想像していた生活と乖離していることに苦痛を感じていた.人工呼吸器装着の意思決定時に同意が得られていた場合は,介護者である家族はサポートを受けながら,患者と共に生きる意味を見出すことで,それを支えに介護を継続していた.今後,専門職は人工呼吸器装着の意向が,患者-家族間で合意が得られるように支援する必要がある.

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© 2021,香川大学医学部看護学科

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